PHYSIIMO BRAND STORY

始まりは、とあるデパートの物産展でした。

その日、ひっきりなしに訪れるお客様のお相手をしていました。
年配のご夫婦、女性4~5人のグループ、顔なじみのお客様などが入れ替わり立ち代わりでした。

昼下がり、若い男性が私の目の前に立ちました。
男性一人でも珍しいのに、彼はトレーナー姿のガッチリ体形で、場違いな感じでした。

その違和感に反する端正な顔立ちと清潔感に吸い込まれ、思わず声を掛けてしまいました。

 

「イイ体されてますけど、何かやっておられるのですか?」

 

その方は、フィジークという競技をされているとのことでした。

体の調整に干し芋を食べるのだとおっしゃっていました。

 

不勉強な私は、特に何も感じず、その時は聞き流してしまいました。

 

その干し芋は・・・マズかった

私たちは、栃木県でオーガニックのさつまいもと干し芋を栽培加工する農家です。

「あかちゃんでも安心して食べられる干し芋」を合言葉に、日々生産に勤しんでいます。

 

戸崎農園はまるつねの子会社で農業生産法人(農地所有適格法人)です。

まるつねは、祖父、戸崎恒が太平洋戦争から引き揚げて興した会社です。

自家野菜の卸売りから始めて、干瓢(かんぴょう:地元壬生町が大産地)の卸売業に移行し、父、裕民と共に軌道に乗せました。


物心ついたばかりの私も、会社の仕事を手伝いました。

お手伝いのご褒美よくもらったのが、干し芋でした。

地元ではカンソイモ(乾燥芋)と言っていました。

色は深緑、真冬のゴムのような硬さで子供の私には容易にはちぎれません。

しゃぶりながら柔らかくして、少しずつ咀嚼していきました。

鼻に抜ける土臭さに辟易しました。

 

カンソイモは嫌いでした。

 

時を経て、父がまるつねの社長となり、宮崎県産の切り干し大根をはじめとした乾物の取り扱いを広げていきました。
さらに時を経て、その次に私がまるつねの社長になりました。

父は「世のため人のためにおいしい干し芋を作りたい」と、戸崎農園を興して、母と共にさつまいもの生産を始めました。

 

父母は親の農作業を手伝った経験はあるとはいえ、主体的に農業をやるのは初めてです。

 

一年目・・・。

ラグビーボールのような大きなさつまいもが出来上がりました。

加工して出来上がった干し芋は、とにかく硬くてマズいものでした。

子供の頃食べたカンソイモの足元にさえも及びませんでした。

 

二年目・・・。

硬い干し芋にならないように乾燥しすぎないようにしました。

やわらかい・・・。

しかし、マズい。まるで芋の煮っころがしでした。すぐにカビが生えました。

 

三年目・・・。

土づくり、肥料の配分、乾燥の方法等、やり方が分かってきました。

この年から、有機栽培をこころざして、有機土壌への転換を始めました。

「あかちゃんにも安心して食べさせたい」、孫が増えた父の切なる想いからでした。

 

農薬は一切使いません。苗を植えてからは雑草との戦いでした。

そうして、やっと満足のいく干し芋が出来上がりました。

お客様も美味しいと喜んでくださいました。

そうは問屋が卸さない

そんな折、東日本大震災が発災しました。

すでに進めていた栃木県産タケノコなどの新規事業の設備投資に加えて、破損機械の修繕や更新が重なりました。
さらに原発事故の風評被害で全く売上がなくなり、お金が回らなくなってしまいました。

借り入れはすでにいっぱいいっぱいです。

 

この芋苗が冬に干し芋となるまで、会社が耐えられそうにありません。

父に「今年の作付けはやめよう」と相談しました。

しかし、父は頑として聞きません。

「ここで辞められるか」の一点張りです。

 

震災後のどんよりとした空気の中、定植機を押す父の後ろを沈んだ気持ちでトボトボとついてまわりました。

空が毎日不気味に曇っていました。今振り返っても灰色の景色しか思い浮かびません。

 

当時は情報が錯綜し、栃木県壬生町への放射能の影響が全く分かりませんでした。

もはや「赤ちゃんでも安心して食べられる」安心安全な干し芋を永久につくることはできないのではないか?

祖父、父、私と70年間コツコツと築いてきたものが一瞬で崩れ落ちた虚無感に襲われました。

資金繰りが苦しいことよりも、お客様に喜んでもらえる商品をもう作れないかも、という絶望に心が潰れそうでした。

 

その年は作業が減り時間ができました。
5回ほど被災地入りして干し芋をお配りしたり、瓦礫や泥の除去のお手伝いをしたりしていました。

 

被災地の方々に「美味しいよ」「ありがとう」と温かい言葉をたくさんいただきました。

 

私は次第に「赤ちゃんでも安心して食べられる安心安全な食品」をつくらなければならない、
お客様に喜んでいただける商品をつくりらなければならない、という事業を受け継いだ時の決意を思い出していきました。

 

私たちの畑では放射性物質は検出されませんでした(正確な表現は「検出限界値以下」)。
その年の秋には無事収穫を迎えて、干し芋の加工までこぎつけることができました。

※戸崎農園では毎年放射能検査を行っています。

PHYSIIMO開発開始!

その後も有機干し芋の生産は順調ではありませんでした。

近年増加する豪雨をはじめとする気象の変化で、根腐れなどをおこし、計画通りに栽培ができない年が何年もありました。

そこにきて新型コロナの影響で卸先のお客様の休業で売上が激減してしまいまいした。

いつもピンチです(笑)。

 

泣きっ面に蜂ですが、悩んでばかりいては前に進めせん。


お金はありません。
手持ちのコンテンツを使って何かできないか?

 

一番の武器はもちろん、オーガニックの干し芋です。

 

偶然、テレビにあの展示会で出会ったフィジーカーさんが出演していました。

 

「そういえばフィジーカーって干し芋を食べるって言ってな。」

 

彼らは日々激しいトレーニングをしながら、食事に細心の注意を払い、長い時間をかけて地道に体づくりをしています。

 

私たちが丹精込めてつくりあげたオーガニック干し芋を、フィジーカーさんが丹精込めてつくりあげた筋肉のエネルギーとして、
そして時には心の癒しとして傍においてほしい。

それができるのは、オーガニックで徹底的に生産管理をしているうちの干し芋だけだと思いました。

 

とはいうものの、フィジークという競技のことを知りませんでした。
もっといえば、フィットネスのことも良く知りませんでした。

 

そこで、開発にあたり18人の現役フィジーカーさんにアドバイスをいただきました。

想いを伝えるとみなさん快く協力をしてくださいました。
皆さんには、心から感謝しております。

彼らの声を聴きながら、うちの干し芋がどの位置にいればトレーニーに喜ばれるのかを模索していきました。

行きついた答えは

基本方針は3つです。
1、バリバリと仕事をこなす忙しいトレーニーが、短時間で手軽に良質なカーボを補給できる。
2、体に必要な量のカーボを的確に補給できる。
3、良い体づくりの素材として、長期間にわたり愛用しやすくする。

そのために、
「オーガニックさつまいもが持つ性質の良さ(低GI、安全、美味しい等)をわたしたちの技術でとことん引き出して、
トレーニーが扱いやすいようにパッケージングして提供する。」

行きついた答えは、至極シンプルで当たり前のことでした。

 

干し芋自体の工夫

有機栽培で安全安心という部分は自信がありました。

低GI(GI値55)で血糖値の急上昇を抑えられるという特性を引きだすべく工夫をしました。

 

・土づくり(自家有機肥料でたっぷりと栄養を与える)

・熟成方法を工夫(ここは腕の見せ所です)

・栃木の冬の気候風土を利用して乾燥度を高める(栃木の冬の日照時間は全国トップクラスで、男体おろしと呼ばれる空っ風を利用)

 

 

パッケージング

一食50gの小分けパックにしました。

ここは、コストが跳ね上がる部分です。袋代、脱酸素剤代、人件費、原料の歩留まりの悪化などです。

しかし、「干し芋は保存管理が大変」、「一度で食べ切れない」、そんなトレーニーのお悩みを解決したかったのです。

小分けにすることにより、マクロ管理や保存を容易にし、かつ携帯性を上げてジムに手軽に持参できるようにしました。


表示方法の工夫
一回の摂取量を決めやすいように小分けにしてあります。さらに、PFCのカロリー換算を表記して計算しやすくしました。

 


デザインの工夫

トレーニーをやる気にさせる、攻めのデザインを採用しました。

ジムでバッグから出した瞬間に注目の的になって欲しいなとの願いが込められています。

一番大切なこと

ネーミングに込めた想いです。

PHYSIIMOは「I」が重なります。

フィジークへの愛(I)とオーガニック干し芋への愛(I)を込めて重ねています。

 

そして、もう一つ、

PHYSICAL IMPROVEMENT MOTIVATION

肉体を鍛えぬく日々、傍にいつもフィジーモを置いて心のエネルギーにしていただきたいとの願いを込めています。

 

私たち戸崎農園は、どんなことがあっても「あかちゃんでも安心して食べられる干し芋」をお客様にお届けすることに邁進してきました。
「オーガニック干し芋生産を通じてお客様の人生の輝きに寄り添いたい」、そんな気持ちで日々生産活動をしています。

 

フィジーク専用のオーガニック干し芋を作りたいと思い立ってから沢山の方々のご協力をいただき、PHYSIIMOを世に送り出すことができました。

これで終わりではなくスタートだと心に刻み、皆様のご意見を伺いながらカイゼンしていきたいです。
PHYSIIMO自体がIMPROVEMENTし続けることが大切です。
さらには、新商品の開発にも挑戦してみたいです。

 

PHYSIIMOをきっかけに、フィジークをはじめとしたフィットネスに興味を持つ方が増えて、皆様の心身がより健康となり、
ひいては日本中が元気になればと願っています。

 

PHYSIIMOで皆様の人生が輝きますように。

代表 戸崎泰秀